日 時: 2002年6月12日(水) 10:00~16:00
場 所: 北海道大学 学術交流会館 第一会議室 (札幌市北区北8条西5丁目)
内 容:
座長:深見浩司(道立地質調査所)
○佐藤大輔、山崎学、石井吉之(北大低温研)
山地流域における冬期の積雪底面融解量が流域内でどのように異なるかを確かめるために、標高の異なる2箇所(平地と山頂)で熱流量計算法、断面観測法、ライシメーター法を用いて底面融解量を測定した。その結果、地中および雪中の熱流量計算から求めた底面融解量はライシメーターで測定した底面融解量に近い値となった。これにより底面融解量を推定する方法として熱流量計算を用いることが適切であることがわかった。さらに、平地と山頂の底面融解量は大きく異なるため、流域の底面融解量を求めるには、多点での観測が必要であることがわかった。
○山崎学、石井吉之(北大低温研)
多雪山地流域における融雪流出過程を調べるために、2001年の融雪期に積雪底面融雪水、土壌水、河川水の採水を行い、従来の主要イオン濃度に加え酸素同位体比の測定を行った。その結果、融雪水の酸素同位体比の変化は融雪が進むにつれて大きく(重く)なった。同様の変化は浅い土壌水(深さ50,100cm)の酸素同位体比でも現れるが、深い土壌水(200cm)では現れなかった。日周期の増減を繰り返す河川水では、融雪が進むにつれ日増水時の酸素同位体比は大きくなるが、日減水時ではかならずしも大きくならなかった。
澤田結基(北大院地球環境)
然別火山群では最低気温が-20℃を下回り,一般にしもざらめ雪が発達する。しかし岩塊斜面では,局地的に雪質が変化する。斜面最上部の積雪には直径20cm程度の穴が開き,暖かい空気を吹き出している。内部温度は+2-3℃,穴の周囲にはしもが発達する.周辺にはざらめ雪が見いだされた。いっぽう斜面下部の積雪にも穴が多数分布する。内部温度は外気と同じである。周辺にはほぼ全層がしまり雪の積雪が分布する。これらの積雪構造は,岩塊斜面と外気の間に生じる空気対流の出口と入り口に,それぞれ対応していると考えられる。
山田知充(北大低温研)
アジア高山地帯のデブリ氷河末端部には、近年の地球温暖化の影響による氷河の急速な融解によって、モレーンで堰き止められた氷河湖が次々と形成され、拡大を続けている。多数発達しているデブリ氷河のなかでも、モレーン堰止氷河湖が形成されているのはその一部に過ぎないのはなぜであろうか?未だ氷河湖が形成されていないデブリ氷河にも、将来氷河湖が形成され得るのであろうか?氷河湖は、氷河が衰退期に入って氷舌表面が低下を続け、遂に氷河表面が氷河内地下水面にまで低下することによ考えている。 その論拠を示し、上の疑問への回答を模索する。
~ 休憩 5分 ~
座長:鳥田宏行 (道立林業試験場)
○宮本修司、浅野基樹(開発土木研究所)
日高自動車道・苫東道路の新規供用前においてサーマルマッピングの調査を実施し、冬期路面管理に係わる要注意箇所を整理した。その結果、当該路線は放射冷却現象の影響を特に橋梁部分で受けやすく、橋梁と土工部で路面温度に大きな違いが発生することが明らかとなった。このことからこの路線においては、特に土工部と橋梁部での路面状態の不連続に留意することが重要と思われる。
○今西伸行(北大低温研)、森谷武男(北大理)、山田知充、西村浩一(北大低温研)
本研究では雪崩発生に伴って生ずる地震動を複数の地震計で観測した。その結果,対象域で同時期に発生した雪崩総数の約80%を地震計で検知でき,雪崩発生のモニタリングに有効であることが証明された。また,得られた震動波形データから、ほぼ同地点で発生した雪崩による震動は、同様な形状の波形を示し,雪崩の規模の増大に伴い,波形の振幅も大きくなることが判明した。一方,波形の周波数解析の結果から,雪崩発生点の推定が可能であることがわかり,さらに震動波形の積分値から雪崩質量の推定も可能であることが示唆された。
○三好達夫、加治屋安彦、福澤義文、松澤勝、山際祐司(北海道開発土木研究所),下澤徹也、三岡孝文(アジア航測株式会社)
北海道内の国道では雪崩に対する各種対策工が実施され効果を発揮しているが、しばしば雪崩が発生し、通行止めになる事がある。この際の判断は適切かつ迅速に行われる必要がある。本発表は、一般国道453号の支笏湖畔斜面における雪崩発生と気象条件等との関係を調べ、支笏湖畔の地域特性に適応した雪崩危険度判定方法について検討した結果を報告するものである。
○千葉隆弘(㈱雪研スノーイーターズ)、小林敏道((有)コバ建築事務所)、苫米地 司(北海道工業大学建築学科)
本研究では,農業施設における滑雪を考慮した積雪荷重評価を行うことを目的に,既存の牛舎を対象とした滑雪の観測を行った。観測は,実大規模の屋根に新品の塗装鋼板,表面劣化を想定した塗装鋼板を並べて設置して行い,これら屋根葺材の差異が滑雪に及ぼす影響について検討した。その結果,劣化を想定した塗装鋼板は滑雪し難く,新品に比べて10日程度長く雪が堆積することが明らかとなった。このことから,滑雪を考慮した積雪荷重の評価を行う場合は,屋根葺材の表面劣化を考慮し,滑雪性を確保する条件を設定する必要がある。
————-昼 食—————
座長:大槻政哉 (日本気象協会)
○高山健、守護雅富、岡本誠、大浦久到(北海道電力㈱)
北海道電力(株)では着氷雪による送電線の障害対策に取組んでいる。今回、送電線への着氷雪現象を解明するために、江別市にある北海道電力(株)総合研究所敷地内に簡易な観測設備を設置し電線表面温度と気象因子の観測を行った。その結果、電線表面温度と外気温の差は日射量の影響を強く受けるが、一方で、風速が大きくなると電線から大気へ失われる熱伝達が大きくなりその差は小さくなること、また、電線表裏の温度差は日射や風速のみならず風向の影響も強く受けていることを確認した。
池田豊、○木村宏義、小林雅彦(北海道電力㈱)
北海道電力(株)では降雪による屋外変電設備の冠雪を抑制する対策に取組んでいる。これまでも、冠雪が成長しづらい構造・形状やヒータによる融雪などにより対策しているが、気象条件によりその効果が小さい場合があるため、対策の効果について確認する目的で冠雪の状況観察を行った。この結果、ヒータによる融雪は時間当たりの降雪量が多い場合に効果が無いこと、ファンによる降雪飛散は比較的小さいファン風速で効果が期待できることを確認した。
○松沢勝、福沢義文、伊東靖彦、加治屋安彦(開発土木研究所)、阿部正明(北海道開発技術センター)、永田泰浩(日本気象協会)
吹き止めタイプの防雪柵の設計については、平成2年3月刊行の「吹雪対策マニュアル(防雪柵編)に考え方が示されている。ところが、吹きだまり量が最大防雪容量を上回る場合がしばしば見られるようになってきた。本研究では、従来のマニュアルの考え方を再検討し、吹き止め柵による防雪対策に関する新しい考え方を提案する。
○松沢勝(開発土木研究所)、竹内政夫、小林利章(日本気象協会)
運転席の高い大型車の方が吹雪時に見通しが利くことはよく知られている。著者らは、吹雪時に道路上の数点で同時に飛雪流量の観測を行い、視程の推算式を用いて道路上の視程を求めた。その結果、降雪の無い場合には、高さによる視程の違いが大きくなることが明らかになった。これは視程の推算式による計算結果を裏付けるものである。
○斎藤新一郎(専大北短大)、鳥田宏行(道立林試)
国道における法面の木本緑化(森林化)は、道路建設にともなう森林の破壊を取り戻す、好ましい環境創造の1手法(生きもの工法)である。けれども、盛り土法面においては、排雪による植栽木の雪害が問題になっているし、峠道においては、春の除雪が道路沿いの天然林に雪害をもたらしている。狩勝峠の場合に、エゾシカによる食害が森林復元の不成績の1要因であるが、排雪グライドも植栽木に重要な雪害をもたらしている。ケヤマハンノキおよびトドモミについて、成長経過を報告し、雪害対策を提案する。
○斎藤新一郎(専大北短大)、山嵜勝志、佐々木正博(日本道路公団)
道央自動車道の防雪林は、全体として、順調に成長し、防雪機能に加えて、防風、防音、修景、景観、ビオトープなど、数多くの付帯機能を発現しつつある。けれども、排雪により、重い氷雪がグライドして、樹高5~8m、胸高直径5~15cmになっても、枝抜け、幹曲がり、幹折れ、幹割れなどの諸雪害が発生し、樹勢の衰えた林木には塩害も加わって、林帯の機能が低下している個所もある。特に、林帯幅が狭いところでは、この傾向がいちじるしく、防雪機能を失った個所さえある。対策としては、早め保育の徹底(除伐、裾枝打ち)とグライド防止杭の再設置とが、不可欠である。
~ 休憩 5分 ~
座長:尾関俊浩(北教大岩見沢)
○小嶋真輔(北見工大)、榎本浩之(北見工大/観測フロンティア)
本研究では、海氷の成長および融解過程における光学的、熱的な変化について検討した。融解期における海氷の現場観測は困難であるため、本研究では水槽を用いた室内実験により、海氷の成長・融解過程を観察し、両過程においての温度・氷厚・スペクトルを測定した。その結果、成長段階に比べ融解段階では、海氷本体の形状変化や、それに伴う表面形状の不均一さなどにより、時間と共にアルベドが急激に変化することが明らかとなった。
油川英明、○尾関俊浩(北教大岩見沢校)、島村 誠(北大低温研)
二つの光源を用いて暗視野照明を施した顕微鏡により、ベントレー式の雪結晶写真を撮影する方法及び撮影の結果について報告する。ベントレーの雪結晶写真は、黒い地に雪結晶を白く浮かび上がらせたものであるが、この写真は原板上において結晶以外の部分を削り取り、それを焼き付けしたもので、人為的な操作が加えられている。このような写真を直接的に撮影するために、顕微鏡の照明を暗視野とし、さらに雪結晶を反射光で撮影する方法を試みた。撮影は、低温室において人工的に作成された結晶と天然の結晶について行った。
平松和彦(北海道旭川西高等学校
従来、雪結晶のレプリカの作成では、ジクロロエタン、塩化メチレンなどの溶媒に、フォルムバールを溶かした溶液を使用することが多かった。また氷晶のレプリカを作る際も、同じ方法で行なわれた。今回提案するのは、スライドガラスの代わりにアクリル板を使い、これにアクリル用接着剤を塗った原版で氷晶をすくいとるという、きわめて簡単な方法(WM法)である。この方法で作った標本は、顕微鏡実習における「長さの測定の指導」の際に、有効に活用することができる。
○荻野裕司、伊賀久晃(北見工大)、榎本浩之(北見工大/観測フロンティア)
人工衛星NOAAの可視及び赤外データと衛星DMSPのSSM/Iデータを用いて、オホーツク海の海氷分布や移動状況、陸地の積雪分布の観測を準リアルタイムで処理利用するシステムを検討した。特に雪氷情報の取得に主眼を置き、流氷や積雪に焦点を合わせた処理をしている。SSM/Iデータについては最新(2日前)のデータを米国NSIDCより取得し、北見工大で氷厚などを推定している。これらのデータは北見工業大学のホームページで公開している。(http://snow.civil.kitami-it.ac.jp)
○佐藤研吾、高橋修平、亀田貴雄(北見工業大学)
無電現地域における無人気象観測における気温測定には、電力を使わなくてすむ自然通風筒が使われることが多い。しかし日中の風速が小さいとき、日射によって通風筒が昇温して、測定値が高くなってしまう難点がある。その難点を解消するためにソーラーバッテリー型通風筒の試験を行った。また、白と黒に塗った自然通風筒を用意し、その温度差から正しい気温を求める方法を試みた。
