北見市:カーリングホールのアイスメイク技術と競技への影響
日本雪氷学会北海道支部では、雪氷に関する啓蒙普及活動を目的として地域講演会を札幌以外の北海道各地において毎年開催している。2025年度の地域講演会は北見市において開催された。一般社団法人カーリング北見に所属し、アルゴグラフィックス北見カーリングホールのアイスメーカーを務める奈良浩毅氏を講師に迎え、カーリングホールのアイスシートを競技ができるように日常的に行うアイスメイクの一連の作業とそれぞれの意味、それらがストーンの滑りや曲がりに及ぼす影響について、実演を交えて講演が行われた。また、ホールの氷の状態を一定に保つために必要となる空調機や気圧および氷温を管理する管理室、純水製造機や創意工夫されたアイスメイクやスートン管理のための道具類を置いた作業室など、一般には入れないバックヤードの見学も行った。開催概要は以下のとおりである。
講演会名:「カーリングホールのアイスメイク技術と競技への影響」
(一社)カーリング北見
アルゴグラフィックス北見カーリングホール アイスメーカー 奈良 浩毅
日時:令和8年2月15日(日) 10:00-12:00
会場:アルゴグラフィックス北見カーリングホール
主催:日本雪氷学会北海道支部
共催:北見工業大学冬季スポーツ科学研究推進センター
後援:北見市教育委員会
協力:一般社団法人カーリング北見
参加者:10名
(一社)カーリング北見所属でアルゴフラフィックス北見カーリングホールのアイスメーカーの奈良浩毅氏が「カーリングホールのアイスメイク技術と競技への影響」と題して実演と講演を行い、北見市内から10名の参加があった。
初めに、氷を競技に使える状態にするために日常的に行なっているルーチン作業の実演と簡単な作業の説明が気温6〜7℃のカーリングホールで行われた。作業の内訳は、シート内の清掃、ストーンの拭き掃除、前日撒いたペブルを削るスクレーピング、氷表面に水滴を撒いて凹凸をつけるペブリング、最後にペブルの高さを揃えるニッピングである。スクレーピングはスクレーパーと呼ばれる大型の機械を使って行われるが、氷表面の凹凸に応じて往復の経路のパターンを日によって変えて行うとのことであった。また、削り過ぎはアイスシートに段差を作ってしまう原因となるため、前日のペブルを8〜9割削り取るイメージ行われるとのことである。ペブリングは、氷上の往路と復路で散布する水の温度と水滴の大きさ、散布の際の移動速度を変えて行われている。往路では水温15℃、小さな水滴で移動速度は遅く散布して、小さな密度の高いペブルを作る。復路では水温40℃、大きな水滴で往路のおよそ1.25倍の速さで散布して低密度でサイズの大きいペブルを作るためとのことである。最後にニッパーを使って氷表面を薄く削り、ペブルの表面の高さを揃えてアイスシートの完成となる。ここでペブルの削り量を増やすとストーンが大きく曲がるアイスシートなるため、削り量が一定となるようにニッパーの刃の向きを調整しているとのことであった。
作業見学の後は、一般には非公開の管理室に移動し、ホールの氷の状態を年間を通して一定に保つために必要な室温、気圧、氷温の制御機材を見学した。氷の管理では高温多湿となる夏季の対策が重要で、室内の気圧を高めに保ち、外気を入り込まないようにすることに苦労しているとのことであった。
その後、会議室に場所を移して見学した一連のアイスメイク作業とストーンの滑りと曲がりの関係について、資料を用いて詳しく解説された。一般にストーンの滑りを決める要因は氷表面の霜の有無、氷表面温度、水質、ペブルの有無、アイスやストーンのよごれであり、曲がりを決める要因はペブルの有無、ペブルの接触面の大きさ・数、ストーンの接触面の粗さなどである。前半の実演で行ったペブリングとニッピングがペブルの密度と接触面の大きさを決めて、競技ではストーンの曲り幅を変えることになる。現在のアイスメイク作業の条件は長年の試行錯誤と創意工夫の結果たどり着いたものだとのことである。また、これらの作業内容や方法は、カーリングホールおよびアイスメーカーによって異なり、それがホールの個性につながっていること、その個性を捉えることもカーリング競技の魅力と奥深さにつながっているとの言葉が印象的であった。
講演会終了後の参加者の感想では、競技者からはアイスメーカーの方々の日頃からの創意工夫とアイスシート管理への努力に対する感謝の言葉が、観戦愛好家からは今後の競技観戦に新たな視点が加わり、より楽しめそうという言葉があり、参加者にとって有意義な講演会だったことが伺えます。
最後になりましたが、開催に当たりご協力頂きました皆様に感謝を申し上げます。




